私が治療家の道を志したのは、中学高校とラグビーに打ち込んだことがきっかけです。
大阪でもそこそこ強い高校でプレーをしていたので、練習はキツく小さい怪我は当たり前。それでも試合に出られるのを楽しみに毎日練習に取り組んでいました。

そんなある日、身体の大きな先輩と正面からぶつかった時に、右肩に衝撃が入って動かせなくなりました。段々と痛みが広がってきて、肩を触ると形が変わってしまっています。

右鎖骨の粉砕骨折。
全治は約1年と診断されました。
手術しても完治しないかもと言われ、絶望的な気持ちになったのを覚えています。

入院して手術を待っている間も、気持ちは沈んだ状態のままで、憂鬱で仕方ありませんでした。
そんな時、支えになったのが柔道整復師(整骨院の先生の資格です)の先生でした。

その病院に勤務される柔道整復師の先生方が、時々病室に声をかけに来てくれたり、励ましてくれたりすることで、少しずつ前向きな気持ちになることができました。

その後手術を受け、病院での治療やリハビリを続けることで右肩は完治し、無事にラグビーにも復帰することができました。
自分が辛い時、苦しい時に支えてもらった経験もあり、
「こんなカッコ良い大人になりたいな」
「自分も、こうして人が苦しい時、不安な時に支えられる人間になりたい」
そう言う気持ちを持ったことが、治療家の道を志したきっかけになっています。

高校卒業後に柔道整復師の専門学校に通い、国家資格を取得。
さまざまな整骨院や社会人アメフトのトレーナーなどの経験を積ませていただいた後、晴れて2013年に自分の院を開院することができました。

一人でも多くの方に、治療を通して笑顔になってもらいたい。
そんな思いで開院し、毎日の診療を続ける中で患者さんに良くなってもらえるのが何よりの喜びでした。

そんな時に苦労したのが、足の治療でした。
当時からマラソンランナーの患者さんが多く、皆さん足首やアキレス腱、足の裏の痛みを訴えて来院されます。

治療した直後には良くても、翌日や走ってみるとやっぱり変わらない。
治療の方法、テーピング、トレーニングなど考えながらやってみてもあまり効果が感じられません。
「今日は調子どうですか?」と聞くのが怖くなり、足の痛みの患者さんが来るのがだんだん嫌になってしまいました。

一体、どうして治らないんだろう?
一体、何が痛みの原因になっているんだろう?
頭の中ではそんなことを考えている毎日でした。

そんな時に思い出したのが、トレーナーをやっていた時のことでした。
トレーナーの仕事は、その選手の動きを診て問題点を見つけ、痛みの改善やパフォーマンスにつなげることです。
思い返すと一番効果があったのは、ビデオや写真に撮ってそれを分析することでした。

そうだ、患者さんの動きも全部ビデオや写真で分析してみたら何かわかるかも知れない。
そう思い立ち、翌日から毎日患者さんの姿勢や歩行を分析するようになりました。

ランニングは院内でできないので、ランニングマシーンを購入して後から撮影しました。
カーブを走るのが痛いと言われれば、一緒に公園に行き走ってもらい分析をしていました。
毎日相当な写真やビデオを撮影していたので、パソコンの容量もパンパンになるほどです。

思ったよりなかなか成果が出ず、「こんなことをしてて意味あるのかな?」と思う日もありました。
そんなある日、パンパンになったデータの整理をしていた時にふと気がつきました。

「あれ?この人とこの人、同じじゃない?」

それは、偶然同じタイミングで撮影されたランニング中の足の写真でした。
別の患者さんなのに、足の着き方が全く同じだったのです。

本来、歩き方や走り方は個性があり、全く同じということは少ないです。
それが、足の痛みがある方で全く同じ着き方になっているのをみて、「これは何かあるんじゃないか」と感じました。

その後、他の患者さんでも同じ足の着き方をしていることがわかり、だんだんと悪い動きのパターンというものが見えてきました。

その悪い動きのパターンから、人間が本来持っている正常なパターンに戻るように治療やトレーニングを進めていくと、これまで難しかった足の痛みがスムーズに改善していくことがわかりました。
これは本当に嬉しかったです。

驚いたのが、足元から悪いパターンをしっかり治していくと、ひざの痛みや腰痛、肩こりなど他の症状まで改善していったことです。

身体はつながっていることを実感しましたし、足元という身体の土台の大切さを経験することができました。
今でも、お身体を治療させてもらうときには、足元からのバランスはとても重要視しています。

現在は大阪だけなく、遠方からの患者さんも多く来院していただいております。
今では休日に多くの先生方を対象に治療技術のセミナー講師を依頼したいただく機会までいただきました。

これからも患者さんのお役に立てるように、技術・知識を学び続け、人間としても成長できるように精進してまいります。

しかし、遠方から来られる患者さんはどうしても継続しての通院は難しいですし、毎日患者さんを治療するだけでは診れる数に限りがあります。

静岡県の患者さんから、足の痛みで涙ながらに相談のお電話をいただいたこともありました。

世の中には、足の痛みで困っている人がたくさんおられる。
足や身体の痛みで辛い思いをして、そのせいで人生を豊かに過ごせない人がいる。

治療院で患者さんに向き合うのも必要だけど、それだと目の前の人しか治療ができない。
何か、手段はないだろうか?

そこで思い至ったのが、これまで行なってきた、悪い足のパターンから人間本来の正常な足のパターンに戻す治療を、自宅で簡単にできる方法はないだろうかということでした。

まず最初に試してみたのは、木の板に角度をつけてその上に乗ってもらうことでした。
ボームセンターで木材を買ってきて、ノコギリでカット。
それをボンドで下駄にくっつけていきます。
最適な角度を見つけるまで何度も失敗しましたが、ようやく効果的な角度が見つかりました。

出来上がった板の上に乗って動いてもらうと、治療したのと同じように足元のバランスが整います。
これは画期的な発見でした。
しかしそのままでは1つ作るのに1時間以上かかってしまいますし、普段の生活で使いにくいのが課題でした。

普段の生活で使うには、サンダルのタイプが良いのではと思い、作ってくれる会社を探すことにしました。
調べて何軒も電話をかけたり、実際に訪問してお話を聞いてもらいましたが、
「こんな形のものは今まで作ったことがない」
「なんですかこれは?」
という反応で、なかなか製作してくれる会社に巡り会えません。

もうこれは作るのは難しいのでは?と思い始めた時に、東大阪のサンダル会社の社長さんから、
「面白いアイデアですね。一度うちで作ってみましょうか?」
とお返事をいただけました。

根気強くお話を聞いていただき、何度も図面を作り直してくださいました。
試作品ができた後も、細かい高さの修正など聞いてくださり、少しずつイメージのサンダルが出来上がっていきました。
製品を作ると言う初めてのチャレンジで、こうして丁寧にサポートしていただけたことは本当に感謝しかありません。

その後試行錯誤を行い、履いているだけで身体のバランスが整うサンダル「おうちでできる歩行ケア」が完成しました。

1日5分履くだけで、身体のバランスが整うサンダルです。
おかげさまで多くの方やアスリートにご購入いただいております。

先日も、和歌山県からお電話があり、
「先生の作ったサンダル買いました。腰の痛みとしびれで朝歩けなかったけど、毎日サンダルを使っていたら痛みもしびれもなくなりました。本当に感謝です。」
と喜びの声をいただきました。

こうしてこれまでの学びや経験が、多くの方のお役に立てることは非常に嬉しいです。

「一人でも多く足元から豊かな人生を送ってもらいたい。」

そんな思いで今後も商品開発、研究を行っていきます。